でもまあ考えるのはよそう。

 ほうれん草の男。それも悪くはない。

 僕は身体こそ華奢ではあるけど、力だって人並み以上にある自信はあるし、実のところ腕に覚えもある。それにほうれん草だってまずまず好きな方だ。

 僕は力強くチャコの横に並び、パイプを吹かす真似事をした。シャツの腕を捲りズンズンと歩いて行くと、チャコは楽しそうにころころと笑った。

「いいぞ、いいぞ!」

 しばらく歩き、促されるままに電車を乗り、また少し歩くとチャコの部屋はあった。

 いきなり部屋ですか?戸惑いつつも結局上がり込んでしまった。


 あまり装飾のない殺風景な室内。それでも所々に置かれている小物は女の子らしいものばかりだった。ただ少し気になるのは壁にある拳程の穴と、他の部屋とは形の違うドアだ。

 でもまあ個性的なチャコからすれば、違和感と呼べるほどのものでもない。


 僕は小さなテーブルの前に座らされ、その夜は数時間の間DVD観賞をさせられることになる。もちろんほうれん草の男のアニメで、驚いたのは実写版が存在することだった。

 と、まあこれが僕とチャコとの一日目だ。仲間達の期待する出来事なんて何もない。ほうれん草の男としての心構えを叩き込まれただけに過ぎない。


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