掬い取ろうにも指の股からするすると抜けてゆく。
 必死に掴もうにも、手掛かりさえ見つからない。
 最後に残る一条さえも、結局は零れ落ち、やがて失われてゆくだけなのだ。
 8月26日、午後8時10分。
 父がこの世を去りました。70歳でした。
 
 26日の営業開始後、家内からの電話。
 まだ今すぐにって話ではないみたいだけど、お父さんの呼吸が乱れてて、意識がないみたい。家族に呼びかけて欲しいって。
 その日は金曜日で、予約で結構埋まっている。
 動きたくても動けない。
 それ以上に、いつも仕事を第一としてきた父の姿を思い出す。
 ごめん。動けない。
 家内は我々親子の関係性を良く分かっている。私に任せてとばかりに頷いてくれる。
 途中オーダーが途切れるたびに、親父が気にかかる。放送の声は自然に震えてしまう。
 次の電話。
 訃報が飛び込む。
 その瞬間、身体を巡る感情は感謝の気持ちしかなかった。家内に言う。
 「今まで本当にありがとう。行けなくてごめん。」
 
 お客様には申し訳ないと思いながらも、フードのオーダーストップを1時間早めてもらい、その足で病院に直行。
 そこからは目まぐるしい展開。
 葬儀屋の手配。通夜と葬儀の打ち合わせ、親類縁者への連絡。
 喪主である僕はほぼ寝る時間さえない。そして、瞬く間に葬儀は終了。
 灰になった親父を自宅に迎え、祭壇に祀る。
 家内と何度も顔を見合わせ、思い出を語り、親父の部屋に入って胸が詰まる。その匂いに思いが込み上げる。
 通夜も葬儀も涙は零さなかった。
 涙を流しては、参列してくださった皆様も僕を不安に思う事だろう。親父自身も。
 今、自宅で一人減ってしまった家族と過ごしている。
 家内と娘の3人で風呂に入り、僕はキッチンでこのブログを書いている。
 親父の部屋の匂いとともに込み上げてくるもの。
 そうだ。僕は泣きたかったんだ。
 思い切り声を上げて、叫びたいんだ。
 お父さん!
 足をバタつかせ、子供みたいに泣きはらしたいんだ。
 大声を上げて駄々をこねるしぐさで、泣き叫びたかったんだ。
 親父ごめん。やっぱり僕は甘えん坊だ。親父のことばかり考えてる。
 誰もいない霊安室で、顔を撫ぜて肩を握り締めて、頬ずりをして、いっぱいキスした。
 親父がいないと寂しいよ。
 いつも僕のやることを駄目の一言で終わらせて、目の上の瘤で、めざわり極まりなく、大好きで大好きでしょうがない親父がいないとどうしようもなく寂しいよ。
 やっぱりただの甘ったれだよ。ごめん。
 でも親父はこれで良かったんだよね。
 もう身体も痛くないし、好きなだけ酒飲めるし、大好きなお風呂もしこたま入れるね。
 だから、もう寂しがるのも止める。
 僕は一家の大黒柱だし、社長だし、親父の息子だから。
 ありがとう。
 僕は親父の息子でよかった。
 親父とこんなにたくさん働けてよかった。
 必ず明月は繁盛させるよ。
 毎日遺影に向かってどうだって自慢するよ。
 本当にありがとう。
 良い兄弟がいるのも、良い妻と可愛い娘がいるのも、明月の従業員がみんな最高なのも、親父のおかげだよ。
 これからはみんなで力を合わせて、親父が居た時以上にたくさん笑うよ。
 親父みたいに愛される人間になるよ。
 ちゃんと見ててね。
 で、駄目なときは今までみたいに、空の上から駄目って言ってね。
 
 それじゃね。
 
 明月は30日までお休みいただきます!
 でも31日からは、まったく通常通り元気に営業します!
 このブログもいつもどおりに展開します!
 明月のミッションは皆さんを元気にすることだからです!
 いつも拙いブログを読んでいただき、本当にありがとうございます!
 今日だけ情けないブログを許してくださいね!
(o^-‘)b
  

[`yahoo` not found]
Facebook にシェア